これほどのスローだと本当の強さは分からないーー弥生賞(2017年)回顧

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皐月賞トライアルの弥生賞(GⅢ)が中山競馬場で行われ、1番人気に支持された福永騎手のカデナが4角で大外に膨れながらも直線でストライドを伸ばして1着。

タイムは2:03.2。

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レース

マイスタイルが好発から1角で先頭を奪うとマイペースの逃げに持ち込みます。2番手には抑えきれないという感じでダイワキャグニー、3番手にはディアシューターで隊列が決まり、向正面から4角までこの並びのまま。

横山典騎手は「落とせるだけ落としてみよう」というスローの逃げ。1000m通過までに13秒台が2つも入るのですから、気負いながらの追走となったダイワキャグニー、馬群の外で捲るタイミングを計っていたコマノインパルスには辛い展開になりました。

3角から少しずつピッチが上がり、カデナが大外から悠然と捲りを打ち、コマノインパルスもそれに合わせて進出。4角でカデナが大きく外に膨れたものの、福永騎手は慌てずに態勢を立て直して逃げるマイスタイルをきっちりと差し切り。カデナの上がりは34.6でサトノマックスと並び最速でした。

 

予想

 

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◎ベストアプローチ

◯マイスタイル

▲ダイワキャグニー

△ディアシューター、サトノマックス、コマノインパルス、カデナ

 

結果

1着:カデナ

2着:マイスタイル

3着:ダンビュライト

3着までに皐月賞GⅠの優先出走権

 

人気馬の敗因

人気のコマノインパルスとダイワキャグニーの敗因はどこにあったのでしょうか?

 

コマノインパルス

コマノインパルスはスタート後手で終始馬群の外を回る形。これだけのスローですから向正面でマイスタイルのハナを叩くこともできたと思いますが、田辺騎手は皐月賞への試走に徹して、捲り勝負に。

3角からピッチが上がり、後ろからカデナが大外を回ってきたのを見て田辺騎手も仕掛けますが、勢いに乗ったカデナとの差は歴然で、バテずにじりじりと伸びて6着。

この敗戦だけで「能力が…」とは言えませんが、本番では昨年のサトノダイヤモンドやナムラシングンのような4角先頭の競馬だと勝負圏に入れるかもしれません。

 

ダイワキャグニー

手先の強い走りで、今日はリラックスして走ることができなかったのが敗因でしょう。

トライアルということもあって、北村騎手はマイスタイルの外で折り合いに専念しましたが、4角では手応えがなくなってしまいました。

 今日の内容だと、少し休ませて東京開催から仕切り直しでしょうか。次走はどのレースを使うのか注目したい1頭です。

 

◎ベストアプローチは4着

最内枠に入ったので、エンジンの掛かりが遅いこの馬にとってはレースがしにくいかなと思っていました。4角を回って直線に入ったところでいくらかのロスがあったものの、スムーズに走っていたのは好印象。ただ、ロスなくインコースをまわっての直線勝負では権利は取れたかもしれませんが、勝つレースではなかったのも事実。

母母父のSilver Hawkがこの馬の小回り適性を後押ししていて、本来ならコーナー加速力で捲る競馬がもっとも合っているはずですから、今日のレースだと消化不良ではあります。

 

皐月賞に向けて

皐月賞の優先出走権を獲得した3頭の評価は?

 

1着:カデナ

コーナーでもスムーズに加速でき、直線に入ってからはきっちりとストライドを伸ばす走りをしていたことは、鞍上の福永騎手にとっても本番への自信になったはずです。

ディープインパクト×母父フレンチデピュティという血統からも、昨年のダービー馬マカヒキに似たタイプ。

レースが終わってみれば、カデナは今回出走した他馬と「現時点」で力が違ったと言える勝利。

本番の皐月賞は2分を切るタイムと上がりが34秒後半から35秒台の決着がデフォルトですから、ゴールまでの残り4Fのスピードの持続力があるかどうかが問われます。今日のカデナの3〜4角にかけての素軽い捲りは皐月賞でもメドの立つ走りでした。

皐月賞に向けて、中竹調教師の手腕にも注目です。

 

2着:マイスタイル

弥生賞は優先出走権がかかるレースだけに、GⅢ京成杯よりも道中のペースが緩むことがままあります。

今年のマイスタイルのように、マイル路線から挑戦した馬が3着内に入ることがあるのは、この中弛みしたペースを利用できたことが大きく、本番に直結するかは微妙なところです。

マイスタイルは走法を見るとピッチですから、中山の内回りはコース形態としては合っているはずで、前半1000mが60秒を切るくらいのペースになった時に加速する脚が使えるかは…

本番でも横山典騎手の連続騎乗であれば、一昨年のクラリティスカイ(皐月賞5着)のようにイーブンペースの巧みな逃げに持ち込めるかもしれません。

 

3着:ダンビュライト

道中は先団のすぐ後ろに位置して、4角手前から押し上げて直線でも一脚を使い3着を確保しました。

マイルでも好走していますが、父がルーラーシップの中距離馬ですから、今日は距離が伸びたのが良かったのと、揉まれてもイヤがらずに走れたところを見ると気性的にも成長しているのでしょう。

外回り>内回りのストライド走法ですから、皐月賞で今回以上のパフォーマンスを発揮できるのかは微妙ですが、ペースは流れた方がベターなタイプなので、皐月賞ではそこに期待がもてます。

 

まとめ 

今年の弥生賞は前半1000mの通過が63.2。

決してスローペースになることが悪いことではないですし、2着に粘ったマイスタイルに騎乗した横山典騎手の「誰も来ないなら落とせるだけペースを落とす」という判断は、有力馬を封じるための作戦ですから非難されるものではありません。

もう、JRAの芝の重賞はスローで流れることのほうが多いのですが、極端に遅いペースのレースでは競走馬の本当の強さは分からないのです。

今年の弥生賞も評価が難しいレースになりました。皐月賞の平均勝ちタイムよりも3秒以上遅いタイムでの決着ですから…

弥生賞の着順もその馬の能力だけではなく、上手く流れに乗れた順番の要素も大きいと思います。

 

皐月賞トライアルはまだスプリングS若葉S、そして獲得賞金上位での出走であれば毎日杯と主要なステップレースがこの後も続きます。

弥生賞を凌ぐようなハイレベルなレースが現れるのか? この後も目が離せません。