ルージュバックの全13戦を解説ーー金鯱賞GⅡ(2017年)の展望として

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GⅠ未勝利が不思議なくらいの才女ルージュバックが、2017年の新設GⅠ「大阪杯」の前哨戦としてGⅡ金鯱賞に出走します。

 

ここでは、ルージュバックの全13戦をプレイバックして解説。

金鯱賞を予想する上での一助になれば幸いです。

 

ルージュバック(5歳 牝馬)

父:マンハッタンカフェ

母:ジンジャーパンチ(母父:Awesome Again)

厩舎:大竹正博(美浦)

 母ジンジャーパンチは北米のGⅠ6勝と活躍した競走馬で、両親の高い競争能力をそのまま受け継いだのがルージュバック。

地面を叩きつけるような前脚の蹴りの強さとしなやかなストライドがマッチして、キレのある末脚を使えることが最大の長所です。

牡馬混合の重賞でも勝ち負けできる能力はGⅠ級と言えますが、今のところはGⅠ未勝利。

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競走成績

2017年3月7日現在での全競走を振り返り、1Rごとに解説します。

 

2歳新馬

新潟芝 1800m 外回り 馬場状態:良

出走頭数:9頭

着順:1着

タイム:1:55.5 上り:32.8

着差:0.2

通過順:6 - 6

鞍上:戸崎圭太

解説

新潟外回りの新馬戦でデビュー。好スタートから戸崎騎手がなだめて4番手の外で待機。道中は極端なスローで馬群は一団のまま。4角手前で後方にいた1番人気アンバーグリスキーがルージュバックの外に被せて進出する。

ルージュバックは進路がなくなり、前が詰まるのを避けてアンバーグリスキーの外へ出し軽く仕掛け、スピードがついてからは戸崎騎手のアクションはほとんどなく、再びしっかりと追い出したのは残り200mの地点から。

特有の前脚を高く上げて地面を叩き付けるような走りは新馬戦の頃からのもの。極端なスローペースと時計の速い新潟競馬場でのものとしても、上り32.8は出色です。

 

百日草特別 2歳500万下

東京芝2000m 馬場状態:良

出走頭数:10頭

着順:1着

タイム:2:00.8(2歳レコード) 上り:33.3

着差:0.4

通過順:9 - 9 - 9

鞍上:戸崎圭太

解説

ルージュバックはスタートをもっさりと出て後方からの競馬。ゴッドバローズが逃げてそれほどスローに落とさずに1000m通過が60.9秒で馬群は縦長に。

3角から4角にかけても隊列は大きく変わらず、直線9番手から戸崎騎手が外を追い上げると、ルージュバックはストライドを伸ばしてスピードにのって坂を駆け上がり先頭に立ちます。坂上からは手綱を抑える余裕がありながら、スピードが乗り切っていて、ラストも11秒台でまとめる優秀さ。

2歳レコードとなった時計もそうですが、この時期の2000mの距離で牡馬と混じっての勝利というのは牝馬にはなかなかできないもので、この時点で重賞級の評価ができます。

 

きさらぎ賞 GⅢ

京都芝1800m 外回り 馬場状態:良

出走頭数:8頭

着順:1着

タイム:1:48.6 上り:34.4

着差:0.3

通過順:3 - 3

鞍上:戸崎圭太

解説

ネオスターダムが逃げて、ルージュバックは内枠から好位3番手のインで折り合いに専念。3角手前ではスムーズに折り合い京都の下り坂へ。前半1000mの通過は61.9秒で、4角手前からポルトドートウィユが押し上げてルージュバックに並びかけ、戸崎騎手も合わせて仕掛けます。

直線で人気馬2頭がほぼ同じ位置から追い出し始め、200mを切る地点でポルトドートウィユを突き放し、最後はほぼ手綱を動かさずにフィニッシュ。上りも34.4でまとめました。

百日草特別のストライドが伸びてすいすいと加速する差し脚も見事でしたが、先行して突き放すレースでも美しいフォームは変わらず。この時点で大きな欠点はなく、クラシックに向けて満点の走りでした。

 

桜花賞 GⅠ

阪神芝1600m 外回り 馬場状態:良

出走頭数:18頭

着順:9着

タイム:1:37.0 上り:33.6

着差:-1.0

通過順:12 - 15

鞍上:戸崎圭太

解説

レッツゴードンキの逃げで始まり、GⅠ史上に残る極端なスロー。

ルージュバックはスタートから自然と後方の位置へ下げて待機。ここまでの3戦と異なり馬群に揉まれる競馬で、4角手前で外から被せられると戸崎騎手が追い出しを始めても馬がすっと反応せずに、コーナーで少し前から離されてしまいます。直線も33.6の上りですから伸びてはいるものの9着に敗れます。

ルージュバックは中距離馬ですから、マイルであればスローは脚が溜まる分OKなのですが、3〜4角での反応が百日草などとは違い、直線に入るまでに前との差を詰められなかったのが大敗の原因。

ルージュバックの短所としては、外から馬に被されるとあまりよくないこと、そして、コーナーを回るときにスピードが乗らないことが挙げられます。

 

優駿牝馬(オークス) GⅠ

東京芝2400m 馬場状態:良

出走頭数:17頭(1頭取消し)

着順:2着

タイム:2:25.1 上り:34.0

着差:-0.1

通過順:6 - 5 - 4 - 4

鞍上:戸崎圭太

解説

15年の優駿牝馬は直線で3頭の才女が歴史に残る叩き合いを演じました。

ルージュバックは2角を回ったところで6番手の外で折り合いもスムーズに追走します。ノットフォーマルの逃げで、途中からペースも緩まず、ルージュバックが4角手前から仕掛けて坂で先頭に立つと、後ろから迫るクルミナル、ミッキークイーンとの素晴らしい叩き合い。

最後はミッキークイーンの勢いに屈したものの、ルージュバックは東京コースで外目を回って走れれば能力をきっちりと発揮できることが分かった1戦。

 

エリザベス女王杯 GⅠ

京都芝2200m 外回り 馬場状態:稍重

出走頭数:18頭

着順:4着

タイム:2:15.0 上り:34.2

着差:-0.1

通過順:16 - 15 - 15 - 16

鞍上:戸崎圭太

解説

オークスから直行して古馬混合の牝馬GⅠへ挑戦。

ウインリバティが前を引っ張り馬群は縦長に。ルージュバックは後方まで下げて外目を追走します。3〜4角にかけてじわっとスピードに乗せようとするものの前との差はそれほど詰まらず、直線に入ってもほぼ最後方。そこから持ち前の鋭い脚を見せますが、先に抜け出したマリアライト、ヌーヴォレコルトを捕らえられず、エンジンの掛かりの遅いタッチングスピーチに差し返されての4着。

このレースでも馬群に揉まれない位置で競馬ができたために、直線ではルージュバックらしい脚を見せることはできましたが、どうしても勝負所のコーナーで前から離されてしまうのがGⅠ格になると大きなロス。ただ、オークスからの休み明けということを考えれば上々の内容。

 

有馬記念 GⅠ

中山芝2500m 馬場状態:良

出走頭数:16頭

着順:10着

タイム:2:33.5 上り:35.0

着差:-0.5

通過順:10 - 10 - 8 - 5

鞍上:戸崎圭太

解説

キタサンブラックの逃げで1000m通過が62.4秒のスロー。ルージュバックは中団の外目をスムーズに追走。向こう正面でゴールドシップが捲って先団にとりつくと全体のペースが上がります。3〜4角にかけて今までにないほどコーナーをスムーズに曲がり、直線でゴールドシップの外から伸びるかという手応えでしたが…

スローの前残りで、外を回った馬はノーチャンスの競馬でしたから、このレースではコーナーをスムーズに曲がれたことに成長を感じさせる1戦でした。

 

中山牝馬S GⅢ

中山芝1800m 馬場状態:良

出走頭数:16頭

着順:2着

タイム:1:50.3 上り:34.7

着差:-0.0

通過順:7 - 7 - 5 - 5

鞍上:戸崎圭太

解説

1000m通過が63.6のスローペース。ルージュバックは大外枠だったこともあって、中団外目をスムーズに追走。向こう正面でフレイムコードの捲りにもひるもこともなく3〜4角にかけてじわっと進出。コーナーもスムーズに回って直線で追い出すと坂を駆け上がるところで先頭に立ちますが、すぐ直後にいたシュンドルボンに差されての2着。

ルージュバックの斤量が56kg、シュンドルボンが54kgと差があったこと、勝ち馬の絶好の目標にされてしまったことを考慮に入れても少し物足りない内容。

このレースを観ても分かるように、コーナーですいすいと加速する馬ではないので、外回り>内回りという適性がはっきりと出ています。

 

ヴィクトリアマイル GⅠ

東京芝1600m 馬場状態:良

出走頭数:18頭

着順:5着

タイム:1:32.1 上り:34.1

着差:-0.6

通過順:7 - 8

鞍上:ルメール

解説

ストレイトガールの勝ちタイムは1:31.5と中距離馬には厳しい流れになったマイル戦。

ルージュバックは4枠ということもあって、中団で折り合い馬群に揉まれる中での追走となりました。

初騎乗のルメール騎手は直線で仕掛けて馬群を割ろうとしますが前へ進まず、その間にショウナンパンドラが外から伸び、ルージュバックは結局外に馬がいなくなると伸び始めての5着。

道中の追走で馬群に揉まれてもイヤがるような素振りはみせませんが、直線では外に馬がいてプレッシャーがかかると推進力がなくなってしまいます。馬群を割るような競馬は合わないので、距離ロスがあっても外目追走がベストです。

 

エプソムC GⅢ

東京芝1800m 馬場状態:良

出走頭数:18頭

着順:1着

タイム:1:46.2 上り:32.8

着差:0.4

通過順:8 - 9 - 9

鞍上:戸崎圭太

解説

マイネルミラノの逃げで1000m通過が60.4秒のスローになり、ただ馬群は縦長。ルージュバックは待望の大外枠で、道中は中団の外目をスムーズに追走します。

4角を回って戸崎騎手が仕掛け始めると、あの「百日草特別」で見せたすいすいとスピードに乗る走りが戻り、逃げるマイネルミラノを32.8の脚で斬れて1着。

能力全開であれば、古馬の牡馬混合戦でもこれだけの脚が使えるのだということを示した1戦。

 

毎日王冠 GⅡ

東京芝1800m 馬場状態:稍重

出走頭数:11頭

着順:1着

タイム:1:46.0 上り:33.4

着差:0.0

通過順:10 - 11 - 11

鞍上:戸崎圭太

解説

エプソムCのリプレイを観ているようなレース。マイネルミラノの逃げで1000mの通過が60.3のスローペース。ルージュバックは7枠だったこともあって、後方の外目をスムーズに追走。

直線ではすぐ前を走っていたアンビシャスの外へ進路をとり、エプソムCと同じような斬れ味でGⅠ級の能力をもつ牡馬を撃破しました。

とにかく外目をスムーズに回れれば能力が発揮できることは分かりましたが、エプソムCと同じようなパフォーマンスで、4歳春よりもさらに能力が上積みされているかは「?」

 

天皇賞秋 GⅠ

東京芝2000m 馬場状態:良

出走頭数:15頭

着順:7着

タイム:1:59.9 上り:33.9

着差:-0.6

通過順:11 - 12 - 10

鞍上:戸崎圭太

解説

ルージュバックは5枠からのスタートで、道中は中団の後ろを追走します。レースはエイシンヒカリの逃げにも関わらず1000m通過が60.8のスローペースになりました。

馬群が凝縮して4角を回るところで戸崎騎手がアクションを起こしルージュバックを促しますが、その外にぴったりとリアルスティールが蓋をしており外目に出すことができません。リアルスティールがピッチで加速し、ルージュバックの外に馬がいなくなると脚を伸ばしての7着。

エプソムCと毎日王冠のように外目をスムーズに回って来れれば…というような敗戦で不完全燃焼なレースになってしまいました。

外枠に入らないと内に閉じ込められてしまう可能性が高まるので、枠順もこの馬にとっては好走する上で大切な要素になります。

 

ジャパンカップ GⅠ

東京芝2400m 馬場状態:良

出走頭数:17頭

着順:9着

タイム:2:26.8 上り:35.2

着差:-1.0

通過順:7 - 7 - 8 - 6

鞍上:戸崎圭太

解説

キタサンブラックの逃げ切りのレースで2着以下は混戦でのゴール。

ルージュバックは2枠のスタートで、道中もインコースを走り、4角から直線に入るところで距離ロスなく最内に潜り込みますが…

今までの好走したレースとは真逆のレースで、戸崎騎手の仕掛けにも反応を示さずに9着に敗退。

距離ロスがあったとしても外目をのびのびと走れれば…と感じる敗戦。外に馬がいるとルージュバックは気になってしまうのか、前を抜かそうという走りではなくなってしまいます。

 

まとめ

全13戦を振り返ってみると、ルージュバックの好走の条件が見えてきます。

 

好走するための条件

1. 外枠に入り、馬群の外目をスムーズに追走

2. 直線では大外にもち出さないと伸びない

3. 東京のようにコーナーが緩いコースの方がプラス

 

出走予定の金鯱賞では上の1〜3の条件が揃うかどうか…

まずは1の条件を満たすためにも枠順の発表が楽しみですね。