シャケトラの素晴らしい捲りーー日経賞(2017年)回顧

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天皇賞・春の前哨戦、日経賞は4歳牡馬のシャケトラが勝利し、キャリア6戦目での初重賞制覇となりました。6月の未勝利戦でデビューとなったためクラシック路線には間に合わなかったシャケトラですが、管理する角居調教師は菊花賞には目もくれず、馬の成長に合わせたローテーションを組むことを選択。前走の日経新春杯では格上挑戦ながら同じ4歳馬ミッキーロケットの2着に好走し、今回の日経賞ではグランプリホース('15年有馬記念優勝馬)のゴールドアクターを撃破しました。

まだまだ成長の余地を残す遅咲きの馬が今後のGⅠでどのような走りを見せるのかは楽しみです。

 

GⅡ日経賞(中山芝2500m)の注目点

新設GⅠ大阪杯が次週に組まれていることから、天皇賞・春に向かう馬たちが集まった今年の日経賞。注目はグランプリホースのゴールドアクターに素質のある4歳馬の5頭が挑むという構図になりました。

期待されたゴールドアクターはいつも通りの先行抜け出しから直線では見せ場を作ったものの、伸び切れずに5着。4歳馬がワンツーを決めるなど、「芝長距離路線の世代交代が始まるのかも?」と予感させる日経賞になったと言えます。

日経賞に出走した4歳馬の着順と人気を挙げるとーー

 

1着:シャケトラ 4人気

2着:ミライヘノツバサ 7人気

4着:レインボーライン 2人気

6着:ディーマジェスティ 3人気

9着:ジュンヴァルカン 5人気

 

掲示板にも載った3頭がゴールドアクターに先着したことからも、この世代の勢いを感じます。それでは、それぞれの4歳馬について上位4頭の解説を。張り切って行ってみましょう!

 

シャケトラ

父:マンハッタンカフェ

母:サマーハ(母父:シングスピール)

厩舎:角居勝彦(栗東)

胴の長さは父マンハッタンカフェ譲りで、コーナーを素軽く加速できる機動力はHaloクロスの影響でしょう。

母サマーハはシングスピール×Woodmanとパワーとスタミナを伝える構成で、ここにマンハッタンカフェですから、パワーとピッチで中山や阪神内回りコースをドカンと捲る脚質に出たのは納得です。

前走の日経新春杯ではこの馬にとって不向きな京都の外回りコースで、ストライド走法の実力馬ミッキーロケットをクビ差まで追い詰めたことからも高いポテンシャルを示していました。今回、京都から中山コースに替わって、血統の通りにパフォーマンスが上がったことからも、中山や阪神内回りのグランプリコースが適性としてはずんどば。

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ミライヘノツバサ

父:ドリームジャーニー

母:タムロブライト(シルバーチャーム)

厩舎:伊藤大士(美浦)

父ドリームジャーニーはステイゴールド直仔でオルフェーヴルの全兄。自身も宝塚記念と有馬記念のグランプリコースに強かったように、産駒も中山>東京、内回り>小回りに良績が集中し、ノーザンテーストのパワーがガッチリと表現されている配合ですから、上りがかかるのもベター。

ミライヘノツバサは日経賞の3着とを含めると中山芝(4 - 2 - 2 -1)で、着外になったのはGⅠ皐月賞ですから、ほぼパーフェクトな成績を残しています。

日経賞はヤマカツライデンの逃げをマークする形で進め、6F目の12.9以外はすべて12.5未満の持続戦を4角先頭の競馬でシャケトラに食い下がったのですから、かなりのポテンシャルを示したことになります。適性の合う合わないがはっきりとしたタイプなので、グランプリコース(中山や阪神内回り)に出走してくれば重賞級の走りが期待できます。

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レインボーライン

父:ステイゴールド

母:レーゲンボーゲン(母父:フレンチデピュティ)

厩舎:浅見秀一(美浦)

母レーゲンボーゲンはローズS1着、阪神JF2着のアニメイトバイオを産んだ好繁殖で、フレンチデピュティ×レインボーアンバーですからパワーとスタミナに富む牝系。

レインボーラインは父ステイゴールドと母系のアンバーシャダイからノーザンテーストのクロスが発生し、姉よりもパワー型に出ています。

血統構成からはNHKマイルC3着、菊花賞2着と直線の長いコースで好成績を挙げているのが不思議なのですが、ステイゴールドの母ゴールデンサッシュ←ダイナサッシュという日本の名牝系から 切れ味を受け継いでいるのかもしれません。

日経賞の行われた中山2500mはコース適性としてはばっちり合っていて、Mデムーロ騎手が4角で内へ入り、進路を探すのに手間取ったのものの4着に入線したのは力がある証拠です。シャケトラと一緒に外から捲ってもいい勝負ができたのではないかという最後の脚色でした。

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ディーマジェスティ

父:ディープインパクト

母:エルメスティアラ(母父ブライアンズタイム)

厩舎:二ノ宮敬宇(美浦)

皐月賞、セントライト記念はいかにも中山コースが合うというパワー捲りでの勝利。上りの脚に限界があるタイプなので、ダービー3着、菊花賞4着は許容範囲の負け方でした。ただ、日経賞の6着はいつもの力強い捲りがなりを潜めてのもので、復調に手間取っているな、という印象を受けます。

昨年の秋からよりムキムキな馬体になり、距離ももう少し短い方が力を発揮できるのかもしれませんが、上りの速さを要求される天皇賞・春では日経賞よりもパフォーマンスがダウンするので、今後のローテーションが…

適性としては宝塚記念向きのタイプなので、そこまでに立て直しがはかれるのか、二ノ宮厩舎の手腕に期待です。

 

日経賞のレース内容

日経賞のレース内容を振り返ってみましょう。

ミライヘノツバサが好スタートからハナを窺う勢いでしたが、逃げ宣言をしていたヤマカツライデンが押して押して何とかハナへ。1000m通過は61.1秒で、その後もペースが大きく緩むことなく持続戦になりました。終始手応えよく4角を回ったミライヘノツバサにゴールドアクターが並びかようとしますが伸びあぐね、3角過ぎから素晴らしい加速で捲ったシャケトラが直線で外から伸びて1着。道中3、4番手からしぶとく脚を伸ばしたアドマイヤデウスが3着を確保。

持続戦をスカッと捲ったシャケトラの脚も素晴らしかったのですが、ミライヘノツバサの積極的な仕掛けも目を見張るものがありました。

 

予想

◎フェルメッツァも◯ナスノセイカンもこれだけ底力を要求される持続戦だと、さすがに力不足でしたね。

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ゴールドアクターとアドマイヤデウス

6歳のゴールドアクターとアドマイヤデウスはともに有馬記念から休み明けの出走で、5着と3着になりました。

 

ゴールドアクター

とくに、中山では崩れたことがないゴールドアクターの5着は評価が難しいところです。休み明けのレースで持続戦になったのは厳しかったとは思いますが…この馬も上りがかかった方が信用できるタイプなので、京都で行われる天皇賞・春は不安。むしろ、宝塚記念が合うタイプなので、そちらに出走するなら期待したいですね。

 

アドマイヤデウス

母ロイヤルカードはどんな父でも活躍馬を輩出するほどの名繁殖です。アドマイヤデウスは、ティンバーカントリー直仔のアドマイヤドンと母系に流れるアドマイヤラピスからそれぞれスタミナを受け継ぎ、持続戦になった時は力を存分に発揮します。

6歳になりましたが、まだまだ能力は衰えが見られないことを示しました。GⅠだと一歩足りない競馬が続いていますが、枠や展開などが噛み合わないこともあったので、もう一花咲かせて欲しい馬です。

それにしても、日経賞での岩田騎手の騎乗は素晴らしく、一時のスランプから完全に脱しました。さすがに、強引にインを突くようなレースはしませんが、以前よりもインに進路を取ることへの躊躇が少なくなっていますね。

 

まとめ

日経賞は天皇賞・春の前哨戦としてとても見応えのあるレースになりました。ただ、ここで好走した馬たちは京都外回りよりも阪神内回り(宝塚記念)に適性があるので、今後のローテーションには注目しましょう。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。