アドマイミヤビの全4戦を解説ーー桜花賞(2017年)展望として

f:id:hakusanten:20170406000548j:plain

ソウルスターリングの「1強」というムードになりつつある牝馬クラシック1冠目の桜花賞

そこに待ったをかける1番手と目されているのがクイーンCを1:33.2の好タイムで勝ち上がったアドマイヤミヤビです。

クイーンCまでアドマイヤミヤビの主戦を務めていたルメール騎手がソウルスターリングに騎乗するため、桜花賞での鞍上はGⅠ競走に滅法強いM・デムーロ騎手に決まりました(うん、これは人気を後押ししますよね)。

アドマイヤミヤビとソウルスターリングの初対決となる桜花賞はハイレベルなレースになることが期待されます。この記事では、アドマイヤミヤビの全4戦と競走馬としての特徴を解説します。

 

アドマイヤミヤビ

栗東の友道厩舎に所属する3歳牝馬。父ハーツクライ、母レディスキッパー(母父クロフネ)という血統で、クロフネを彷彿とさせる大跳びのフォームはパワーを感じさせます。牝馬としては馬格があり、見栄えのする馬体も特徴です。

アドマイヤミヤビが注目を集めたのは、未勝利戦を勝った後に挑んだ百日草特別(500万下東京芝2000m)。このレースで、牡馬のカデナやアウトライアーズといった素質馬を抑えて1着に入線し、一躍クラシック候補に名乗りを上げました。

前走のクイーンCでは前後半の800mが46.8 - 46.4のほぼイーブンペースを、上り33.6で力強く差し切る快勝を見せ、堂々と桜花賞へ向かうことになりました。

 

血統

父:ハーツクライ

母:レディスキッパー(母父:クロフネ

ハーツクライは晩成傾向にある種牡馬ですが、代表産駒のジャスタウェイシュヴァルグランなど古馬になってから急激な成長曲線を描くタイプと、ワンアンドオンリーヌーヴォレコルトウインバリアシオンなど3歳時からクラシック戦線で活躍するタイプの2つに分かれます。アドマイヤミヤビは3歳の早い時期から高いポテンシャルを発揮しており、後者に分類されます。

母のレディスキッパーは曾祖母のウインドインハーヘアーにデインヒルクロフネとパワーとスピードに長けた名血・名種牡馬が掛けられおり、血統表の至るところにNorthern Dancerが配されています。ハーツクライの母アイリッシュダンスは父トニービン×母父LyphardNorthern Dancer直仔)ですから、アドマイヤミヤビもNorthern Dancerの血が多過ぎるくらいで、このパワーが重厚なフォームの源になっているのでしょう。

 

全4戦をプレイバック&解説

それでは、アドマイヤミヤビの全4戦を1レースずつ振り返ってみましょう!

 

2歳新馬 中京芝1600m

馬場状態:良

出走頭数:16頭

着順:2着(2人気) 着差:-0.2秒

タイム:1:35.6 上り:34.1

通過順: 6 - 6 - 6

鞍上:C・ルメール

解説

五分のスタートからコースの内目5番手のポジションを取り、ルメール騎手がわずかに促しながらの追走。逃げたカシノスターダストの作ったペースは1000m通過が61.1秒のスローペースになりますが、この時期の2歳戦としては極端なスローというほどではありません。

4角手前からルメール騎手が仕掛け、中京のスパイラルコースの影響もあって、アドマイヤミヤビはスピードが乗ると少しずつ外へ膨れます。直線では大外に出してから、前を走る1番人気のクライムメジャーが外へヨレたその内を突いて伸びますが、前を捕らえることができずに2着。

上り3Fが11.5 - 11.4 - 11.6の瞬発力勝負になり、ほぼ失速しないイーブンのラップで駆け抜けたのは優秀です。クライムメジャーの父ダイワメジャー、アドマイヤミヤビの父ハーツクライ、直線では瞬発力というよりも、それぞれの父らしい持続力を見せた形になりました。

アドマイヤミヤビは重厚なストライドで、見栄えのする馬体とフォームが特徴的。道中、鞍上が軽く促しながらの追走を見ても、マイルは少し短い印象です。

 

2歳未勝利戦 阪神芝1600m(外回り)

馬場状態:稍重

出走頭数:15頭

着順:1着(1人気) 着差:0.3秒

タイム:1:34.8 上り:33.7

通過順: 10 - 10

鞍上:C・ルメール

解説

大外枠からもっさりとしたスタートを切り、ルメール騎手がいくらか促して中団後方の内へアドマイヤミヤビを誘導します。中団よりも後方に位置しますが、馬群は詰まった状態。4角手前からルメール騎手が仕掛け始め、コーナーで外へ出します。直線を向いて、大外に進路を取るとパワーのあるストライドでスピードに乗り、残り100mを切ったところで先頭に立ちます。上り3Fは33.7で11.7 - 11.0 - 11.6のラップ推移。この11.0 - 11.6を計時した、坂を駆け上がるスピードが明らかに他馬と違っていて、パワー溢れる豪快なストライドは33.7秒の瞬発力には見えないところがこの馬の良さなのでしょう。

新馬戦とは一転して、ラスト2F目で11.0の加速ラップを踏めたことは収穫で、未勝利戦では力が違ったという内容。時計の出る馬場とは言え、1000m60.5秒の通過から上り33.7の末脚で伸び切ったのは並の馬にできることではありません。

気がかりなのは、4コーナーでスピードを上げた時に他の馬よりわずかに遅れをとってしまうことです。アドマイヤミヤビは大跳びのストライドで走るので、コーナーでスピードが乗りにくいタイプと言えます。

 

百日草特別 2歳500万下 東京芝2000m

馬場状態:良

出走頭数:11頭

着順:1着(1人気) 着差:0.1秒

タイム:2:03.4 上り:33.4

通過順: 6 - 7 - 6

鞍上:C・ルメール

解説

好スタートから控えて6番手のインのポジションを取ります。2歳の2000m戦ということもあり、ゆったりとした流れで1000m通過が63.8。馬群は一団となって4角を回り、アドマイヤミヤビは馬場の真ん中より内目から仕掛けて伸びてきます。最内からアウトライアーズが先頭に立ったところを、ルメール騎手のアクションに応えたアドマイヤミヤビが真っ直ぐに伸びて交わし、外から迫るカデナの追撃を封じて1着。

上りは33.4でレースの上り3Fラップは11.8 - 11.0 - 11.1と瞬発力勝負になりました。未勝利戦を勝った時と同じようにラスト2F目が11.0と速く、アドマイヤミヤビは坂を駆け上がる時のパワーが卓越していて、ここで他馬よりも先に抜け出した分勝ち切れました。11.0 - 11.1とほぼ失速していないラップも優秀です。

新馬戦から3戦を通じて、追い出されてから外や内によれることなく真っ直ぐに走れること、そして、重厚なストライドながら速い上りを出せることがアドマイヤミヤビの長所と言えます。

2着と3着に下したカデナ、アウトライアーズは牡馬クラシックの有力馬ですから、牝馬がこの強敵2頭を倒したのは価値が大。

そもそも、2歳の牝馬で牡馬混合の2000mのレースに出て勝つことが稀で、近年ではルージュバックのみですから、アドマイヤミヤビのポテンシャルの高さがうかがえます。

この後は休養を挟んでクイーンCに向かいます。

 

クイーンC GⅢ 東京芝1600m

馬場状態:良

出走頭数:16頭

着順:1着(1人気) 着差:0.1秒

タイム:1:33.2 上り:33.6

通過順: 8 - 6

鞍上:C・ルメール

解説

好スタートから、ルメール騎手が軽く促しますが、アドマイヤミヤビは自然と中団の位置へ下がります。レーヌミノルがスピードの違いでハナに立つと、前半の800mが46.8と緩みのない流れに。アドマイヤミヤビは4角から外に出して仕掛け直線へ。レーヌミノルが後ろを突き放しかけたところをアエロリットが馬場の真ん中を突いて伸び、その外からアドマイヤミヤビが追う展開。坂を駆け上がるところで、先頭に立ったアエロリットをアドマイヤミヤビが捕らえ、残り200mの時点で先頭に立つと、そのまま1着でゴール。

上り11.3 - 11.2 - 11.6と持続的な流れを差し切ったのですから立派の一言。前走の百日草特別と同じように、坂を駆け上がる時のパワーが素晴らしく、一度スピードに乗ってしまうとそれを持続させる能力にも優れています。

クイーンCは前後半800mが46.8 - 46.4のイーブンペースで、これをスカっと差し切るのは高いポテンシャルがあるからこそです。

コースは違いますが、ソウルスターリングチューリップ賞で記録した勝ちタイムとクイーンCは同タイム。この内容からしても桜花賞で十分に勝ち負けになる力をもっていることははっきりとしました。

ただ、馬体や走法からもアドマイヤミヤビの本質は中距離馬で、マイルだと騎手が促しながらの追走になってしまいます。平均的な流れであれば中距離馬でも追走で脚を使うことはありませんが、前傾ラップになると道中で脚が溜まるかは未知数。

阪神の外マイルですから、それほど速くなるとは考えれられませんが、もし道中のペースが速くなるようだとここまでに見せた重厚な末脚が鈍るおそれがあります。

 

まとめ

アドマイヤミヤビの全4戦をプレイバックしてみても、ポテンシャルの高さは疑いようがありません。特に、坂を駆け上がる時のパワーとスピードが卓越していて、阪神外回りで行われる桜花賞は適性としては合っています。

1つ気になるのは、マイルのレースだと道中騎手が促すシーンが多く見られることで、本質的に中距離馬のアドマイヤミヤビにとって、あまりペースが速くなるようだと道中で脚を使ってしまい、クイーンCで見せた末脚が不発になるおそれもあります。

騎手が道中で促すくらいですから、折り合いに関しては心配の必要はなく、瞬時にトップスピードに乗せることができるM・デムーロ騎手とも相性がバッチリのタイプだと思います。

 

桜花賞ソウルスターリングとアドマイヤミヤビのマッチレースになるのか? それとも他馬が割って入るのか?

今から桜花賞が楽しみになりますね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。